―はいつくばってでも―

上野 雄一郎 著



羽生から四国のなんたら山企画のメールが送られてきた
以前から企画されていた山だったため、即了解の返事を送り用意を急いでいた
しかし、後日
参加人数の関係から四国を断念し
ターゲッツを変更するとのメールがまたまた送られてきた
そしてその行き先となったのが・・・

六甲縦走

え?!マジで・・・
2人で・・・
ジマで・・・


そんなこんなで
土曜日に六甲縦走が決定・決行・こけこっこーとなった
当日、午前4時
オレは1時間半の睡眠により万全の体調でその日を迎えた
ニッタクシーの待つ守衛前へ
・・・しかし・・・
ドライバーは前夜の飲み会が効いているようで、すでにDG5(泥酔・ゲロ吐く・5秒前)
遠めからみても、ウナダれて、ヨダレ垂れているのがわかる程に完成されていた
しかし、本人曰く「余裕」とのこと
多少ヨダレが気にはなったが、ひとまず羽生亭へと向かった

到着後しばらくすると前方から暴走帰りの羽生が爆音を轟かせ帰ってきた
ひとまずこれで主役(ヒロイン)は揃った
ヨダレを撒き散らしながらヒロインを乗せた車は夜のトバリを突き進んだ
宝塚駅をすぎたころ、DG5が口を開いた
「羽生なら、宝塚駅から歩くと思ってんけどなぁ〜?!」
なんて挑戦的で、なんて壷を突きまくった質問なんだぁ〜?!
「DG5余計な事を言うな!羽生を荒立てるんじゃない!」とオレは思ったが
羽生の口からは以外な言葉が出た
「イヤ、今回は完走優先だ。多少の犠牲はやむをえない」
そう、羽生は今回の縦走に大きな執念を燃やしていた
それを後からマジマジと思いしらされることを、この時のオレは知るよしもなかった


AM4:40塩尾寺に到着、ここでDG5と別れた
今回、極限の軽量化からカメラはなし。記録は全て羽生の携帯で行うこととなった


(見事だ、どこからどう見ても塩尾寺!この後の写真にも期待が胸を踊らざるを得ない)

そして岩倉山・御葉山・岩原を越え大平山にきた頃、日が上り出した


(大平山からの日差し)

船坂峠を越えAM7:15六甲山頂へ到着
ペース的にはこんなもんか?!


山頂にて
左:名カメラマン撮影による羽生
右:羽生撮影によるMr,X

六甲山頂から摩耶山へは大きな高低差もなくのんびりとハルク・・いや、歩く


AM10:00摩耶展望台へ
見事だ、霧とガスかで下界の見晴らし2%
少し早いが、早弁をすることにした
飯を食い終わると羽生が何やら慌ただしい動きをしている
ん?高山病か?
いや、ライターを無くしたのだ
といっても、信じてはいけない!
違いの分かる人なら察しがつくだろうが、これは偶然を装った計画的な軽量化であった
それを裏付けるかのように
ここからが六甲縦走逆コースの本当の始まりだったのだった野田なのだ
摩耶山を下り高尾山・再度山のわきを抜け鍋蓋山へ

標高500m以下の山が群れをなす
(ここまで来ると生物が存在できないため、下山まで人の写真はない)

そして菊水山へ・・・
この山はその昔、一人の登山家の膝を打ち砕いたことで有名な山である
彼はこの山以来、DG5へと変貌したとかしないとか
そんな伝説の山を下るころ、オレは股(もも)の異変に気付いた
ツリかけ?!やばい・・・
六甲山頂から太股の張りは感じていたものの
菊水山の下りは思った以上のダメージをオレ股に与えていた
太股がツル=リタイヤがオレの脳裏をかすめ出す
ここからは、股との戦いともなり羽生に遅れを取り始めた
そう、羽生がオレを待ち、オレが羽生を待たせる
そんなEach otherの関係がここから生まれていた


日も傾きだした頃、ようやく須磨アルプスへ
縦走も終盤戦へと差し掛かった
高取山から高取神社へ
ここは以前、須磨側から上ったことがあり
ここまで羽生に経験者面をさせてやっていたオレだったが
ここへ来てやっと残りの道乗りを全て把握することができた
と同時に今からあの日の登山開始か・・・

菊水山に比べると楽なせいか、このあたりはあまり印象に残っていない
ただ、先回縦走に兆戦した際にこの辺りで
山桜メンバーが道を尋ねたオヤジにずっと後を付けられたエピソードを聞いた
その話事態はおもしろかったが、羽生の記憶があいまいで
「あっ、ココ・ココ、ここに隠れてこーやって見とってん」
その後、一筋曲がると
「ちゃうわ、ここの隅からこんなんして覗いとってん」
またさらに進むと
「間違いない、ここやわ、ここからオッサンが・・・」
どこでもええねんオッサンポジは!!
などとは微塵も思わないオレはその度ごとに
「へぇ〜」「はぁ〜」「すごいなぁ〜」
っと言っていたのは鮮明に記憶している

そんな楽しいトークtoトークもあってか
気が付けば残る※2っの山の1っ東山まで来ていた
(※正確には4っだが、山が2っづつコラボっているため)


馬の背の階段に差し掛かったころ
羽生のペースが明らかに落ちているに気付いた
オレに合わせてくれているのか?!
いや、少なくとも羽生にも限界が近づいてきていた
あのプライドの高い羽生が
手すりを握っていた・・・
すこしその光景には驚いたが、羽生も人間
いつDG5になってもおかしくはないのだ

その様子からも今回の縦走に対する羽生の執念がヒシヒシと感じられ
おれはイヒイヒと旭化成になっていた

しかし
こんな極限状態でも羽生の見つめる先は一つ

槍であった・・・


え?見えんの?!

馬の背から横尾山を越え栂尾山山頂へ
ここの展望台からは最後の山
鉄拐山と鉢伏山のコラボったやつをスグそこに望むことができた
そろそろニッタクシー見えるかなぁ〜


槍か?by羽生


みっえるっかなぁ〜by Mr,X

そして最後の山へと続く市街地におりようとした
その時
ついに羽生が突如として、今の胸中を語ってくれた


「オレはたとえ這いつくばってでも完走してやる!」


え?!ゴールもうスグそこですやん?!その山チョイっと越えたとこですやん?!
などとは微塵も思わないオレは、人目も憚(はばか)らず号泣していたとか

そして市街地に降り立った

どの山を歩いている時だったか、一つの約束を2人は交わしていた
それはお互い完走したあかつきには、今一番飲みたいものを飲もうと!

えっ?普通?
普通言うな!ボケ!!

羽生はコーラ
オレは既にコーラを飲んでいたためビール

そのため、オレはここでブツをゲット!冷やすための氷と共にザックに積めこんだ
羽生は須磨浦公園駅でゲットできるためそのまま通過


「さ〜最後の山や!!」
などとは誰も口にしていないが・・・
市街地をぬけると、目の前には薄暗い鉄拐山

ここからは幾重にも続く階段
2人共無我夢中で登る
もちろん両手共手すりを握りしめ
それは、まるで這いつくばるかのように・・・

そして最後の鉢伏山(はちぶせ)を登りきり
最後の最後で羽生が道を間違いかけ、本当に這って登りかけた先に見えたのは

昼間とは全く別もののクッキリと澄みきった夜景だった
まるで、オレ達の労をねぎらうかのように


そんなキレイな夜景を見ながら、長らく下で待たしたであろうニッタクシーへとTELした
プルルルルル−
ニッタクシー>「おっ、おぉ、寝とったわ!今からいこか?」(自宅にて)

この事件がその後の二人の足取りに戒心の一撃をを食らわせたことは言うまでもない


あちらこちらが痛む中、海を見下ろす石段を1歩づつ降りる
そして最後の一段へ・・・
羽生とオレは、電波少年の国境越えバリに手を繋ぎ最後の石段から飛び降りた


長かった

ひたすら長かった

そう思いながらも、2人の頭はブツのことで頭がイッパイだった
早速、羽生は自販機でコーラを
オレは氷に埋もれた袋からビールを取り出す

お疲れ!!

Mr,X撮影:羽生とコーラ


羽生撮影:ピロピロハルク

お互いの健闘に、自分への褒美に
美酒を交わした

もし、雨が降っていたなら・・・
もし、パートナーが羽生でなかったら・・・
もし、ニッタクシーが来ていたら・・・


状況はどう転んだかわからない

運かもしれないし

実力かもしれない

ただ思うのは


2度とするか・・・。



-End-



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